日本文学名作系列:夏天的花(日文版)(txt+pdf+epub+mobi电子书下载)


发布时间:2020-05-27 08:36:45

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作者:原民喜

出版社:华东理工大学出版社

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日本文学名作系列:夏天的花(日文版)

日本文学名作系列:夏天的花(日文版)试读:

夏の花

あいものこいそ

わが愛する者よ請ふ急ぎはしれ

かおりやまやまうえのろ香はしき山々の上にありて獐のおが

ごとく小鹿のごとくあれ

わたしまちではなかつまはかおとずおも私は街に出て花を買うと、妻の墓を訪れようと思っぶつだんだせんこうひとたばはちた。ポケットには仏壇からとり出した線香が一束あった。八がつじゅうごにちつまにいぼん月十五日は妻にとって初盆にあたるのだが、それまでこのまちぶじうたがちょうどふるさとの街が無事かどうかは疑わしかった。恰度ちょう

きゅうでんびあさはなまちあるど、休電日ではあったが、朝から花をもって街を歩いているおとこわたしみはななにめい男は、私のほかに見あたらなかった。その花は何という名しょうしきいろしょうはなびらかれんやしゅお称なのか知らないが、黄色の小瓣の可憐な野趣を帯なつはなび、いかにも夏の花らしかった。

えんてんさらはかいしみずうはなふたわ炎天に曝されている墓石に水を打ち、その花を二つに分さゆうはなさはかなんすがすがけて左右の花たてに差すと、墓のおもてが何となく清々しくわたしはないしみいはかなったようで、私はしばらく花と石に視入みいった。この墓のしたつまふぼほねおさむもき下には妻ばかりか、父母の骨も納っているのだった。持って来せんこうもくれいすわたしいどた線香にマッチをつけ、黙礼を済ますと私はかたわらの井戸みずのにぎつこうえんほうめぐいえもどで水を呑んだ。それから、饒津公園の方を廻って家に戻ったひよくじつわたしせんこうのであるが、その日も、その翌日も、私のポケットは線香のにおいげんしばくだんおそ匂においがしみこんでいた。原子爆弾に襲われたのは、そのよくよくじつ翌々日のことであった。

わたしかわやいちめいひろはちがつむいかあさ私は厠にいたため一命を拾った。八月六日の朝、わたしはちじごろゆかはなまえばんにかいくうしゅうけいほう私は八時頃床を離れた。前の晩二回も空襲警報がでなにごとよあけまえふくぜんぶぬひさ出、何事もなかったので、夜明前には服を全部脱いで、久しぶねまききかねむおだとき振りに寝間着に着替えて睡った。それで、起き出した時もパンひといもうとすがたあさねツ一つであった。妹はこの姿をみると、朝寝したことをぶなんわたしだまべんじょはいつぶつ難じていたが、私は黙って便所へ這入った。     なんびょうごとつぜんわたし

それから何秒後のことかはっきりしないが、突然、私ずじょういちげきくわめまえくらやみおの頭上に一撃が加えられ、眼の前に暗闇がすべり墜ちた。わたしおもわめあたまてたちのぼあらし私は思わずうわあと喚き、頭に手をやって立上った。嵐のついらくおとまっくらてようなものの墜落する音のほかは真暗でなにもわからない。手さぐとびらあえんがわときわたし探りで扉を開けると、縁側があった。その時まで、私はうじぶんこえおとなかみみわあという自分の声を、ざあーというもの音の中にはっきり耳めみもだえんがわでにきき、眼が見えないので悶えていた。しかし、縁側に出ると、まうすなかはかいかおくうかだきもち間もなく薄らあかりの中に破壊された家屋が浮び出し、気持きもはっきりして来た。いやゆめできごとにさいしょ

それはひどく厭な夢のなかの出来事に似ていた。最初、わたしあたまいちげきくわめみときわたしじ私の頭に一撃が加えられ眼が見えなくなった時、私は自ぶんたおしめんどう分が斃れてはいないことを知った。それから、ひどく面倒なこおもはらださけとになったと思い腹立たしかった。そして、うわあと叫んでいるじぶんこえなんべつじんこえみみ自分の声が何だか別人の声のように耳にきこえた。しかし、ようすおぼろめみくこんどさんげきあたりの様子が朧ながら目に見えだして来ると、今度は惨劇ぶたいなかたきもちの舞台の中に立っているような気持であった。たしか、こういこうけいえいがみもうもうけむさじんう光景は映画などで見たことがある。濛々と煙る砂塵のむこ

あおくうかんみくうかんかずふかべうに青い空間が見え、つづいてその空間の数が増えた。壁のだつらくところおもほうこうあかさ脱落した処や、思いがけない方向から明りが射して来る。たたみとびちざいたうえあるいむかす畳の飛散った坐板の上をそろそろ歩いて行くと、向うから凄いきおいいもうとかけきさまじい勢で妹が駈つけて来た。だいじょうぶいもうと

「やられなかった、やられなかったの、大丈夫」と妹さけめちではやあらだいどころながは叫び、「眼から血が出ている、早く洗いなさい」と台所の流

すいどうでおししに水道が出ていることを教えてくれた。

わたしじぶんぜんらたいきづ私は自分が全裸体でいることを気付いたので、「とにかくきいもうとかえりみいもうとこわのこおし着るものはないか」と妹を顧ると、妹は壊れ残った押いれとりだだれきみょうみ入からうまくパンツを取出してくれた。そこへ誰か奇妙な身ぶちんにゅうきかおち振りで闖入して来たものがあった。顔を血だらけにし、シャツいちまいおとここうじょうひとわたしすがたみ一枚の男は工場の人であったが、私の姿を見ると、「あぶじいすでんわでんわでんわなたは無事でよかったですな」と云い捨て、「電話、電話、電話つぶやいそがどこたちさをかけなきゃ」と呟きながら忙しそうに何処どこかへ立去った。

いたすきまできたてぐたたみさんらんいえ到るところに隙間が出来、建具も畳も散乱した家は、はしらしきいあらわきいちんもく柱と閾ばかりがはっきりと現れ、しばし奇異な沈黙をつづいえさいごすがたあとしけていた。これがこの家の最後の姿らしかった。後で知ったとよちいきたいがいいえとうかいころに依ると、この地域では大概の家がぺしゃんこに倒壊しいえにかいおゆかよたらしいのに、この家は二階も墜ちず床もしっかりしていた。余ほどふしんよんじゅうねんまえしんけいしつ程しっかりした普請だったのだろう。四十年前、神経質ちちたな父が建てさせたものであった。

わたしさくらんたたみふすまうえふみこみ私は錯乱した畳や襖の上を踏越えて、身につけるも

さがうわぎみつけもとのを探した。上着はすぐに見附かったがずぼんを求めてあちこめちゃくちゃちしなものいちすがたちしていると、滅茶苦茶に散らかった品物の位置と姿が、ふいそがめとまさくやよほんぺーじと忙しい眼に留るのであった。昨夜まで読みかかりの本が頁おなげしついらくがくさっきおこをまくれて落ちている。長押から墜落した額が殺気を帯びて小ゆかふさどこすいとうみ床を塞いでいる。ふと、何処からともなく、水筒が見つかり、ぼうしできみつづいて帽子が出て来た。ずぼんは見あたらないので、今度は足はさがに穿くものを探していた。ときざしきえんがわじむしつあらわわたし

その時、座敷の縁側に事務室のKが現れた。Kは私のすがたみと姿を認めると、たすひつうこえよ

「ああ、やられた、助けてえ」と悲痛な声で呼びかけ、そこすわこがくすこちふきでへ、ぺったり坐り込んでしまった。額に少し血が噴出ふきでてめなみだおり、眼は涙ぐんでいた。どこたずひざ

「何処をやられたのです」と訊ねると、「膝じゃ」とそこをしわそうがんゆが押えながら皺の多い蒼顔そうがんを歪める。

わたしそばぬのぎかれあたくつしたにまい私は側にあった布切れを彼に与えておき、靴下を二枚かさあしは重ねて足に穿いた。けむりでにつに

「あ、煙が出だした、逃げよう、連れて逃げてくれ」とKはしきわたしせだわたしとしうえ頻りに私を急かし出す。この私よりかなり年上の、しかしへいそげんきてんどうぎみ平素ははるかに元気なKも、どういうものか少し顛動気味であった。

えんがわみわたいちくずおかおくかたまり縁側から見渡せば、一めんに崩れ落ちた家屋の塊があかなたてっきんたてもののこもくり、やや彼方の鉄筋コンクリートの建物が残っているほか、目ひょうなにわどべいわき標になるものも無い。庭の土塀のくつがえった脇に、大きなかえでみきちゅうとおこずえてあらいばち楓の幹が中途からポックリ折られて、梢を手洗鉢の上にぼうくうごうかが投出している。ふと、Kは防空壕のところへ屈み、がんばすいそうへんい

「ここで、頑張ろうか、水槽もあるし」と変なことを云う。かわいわたしいふしん

「いや、川へ行きましょう」と私が云うと、Kは不審そうに、かわかわいで

「川? 川はどちらへ行ったら出られるのだったかしら」とうそぶ嘯く。にじゅんびととのわたし

とにかく、逃げるにしてもまだ準備が整わなかった。私おしいれねまきだかれてわたさらえんがわあんまくは押入から寝間着をとり出し彼に手渡し、更に縁側の暗幕ひきさざぶとんひろえんがわたたみかえを引裂いた。座蒲団も拾った。縁側の畳をはねくり返してもちにようざつのうできわたしほっみると、持逃げ用の雑嚢が出て来た。私は吻としてそのカバ

かたとなりせいやくがいしゃそうこあかちいほのおンを肩にかけた。隣の製薬会社の倉庫から赤い小さな焔すがたみにじきわたしさいの姿が見えだした。いよいよ逃げだす時機であった。私は最ごおまがかえでそばふみこでい後に、ポックリ折れ曲った楓の側を踏越えて出て行った。おおかえでむかしにわすみわたししょうねん

その大きな楓は昔から庭の隅にあって、私の少年じだいむそうたいしょうじゅもく時代、夢想の対象となっていた樹木である。それが、このはるひさぶきょうりいえかえくら春久し振りに郷里の家に帰って暮すようになってからは、どむかしうるおすがたじゅもくうも、もう昔のような潤いのある姿が、この樹木からさえくわたしきいおもふしぎ汲みとれないのを、つくづく私は奇異に思っていた。不思議なきょうりぜんたいしぜんちょうしうしなのは、この郷里全体が、やわらかい自然の調子を喪っ

なにざんこくむきぶつしゅうごうかんて、何か残酷な無機物の集合のように感じられることでわたしにわめんざしきはいいあった。私は庭に面した座敷に這入って行くたびに、「アッ

いえほうかいことばうかシャ家の崩壊」という言葉がひとりでに浮んでいた。わたしほうかいかおくうえのりこしょうがいぶつよ

Kと私とは崩壊した家屋の上を乗越え、障害物を除すすいあしもとけながら、はじめはそろそろと進んで行く。そのうちに、足許がへいたんじめんたっどうろでこん平坦な地面に達し、道路に出ていることがわかる。すると今どいそあしみちなかある度は急ぎ足でとっとと道の中ほどを歩く。ぺしゃんこになったたてものかげわめこえふりかえ建物の蔭からふと、「おじさん」と喚く声がする。振返ると、かおちおんななあるく顔を血だらけにした女が泣きながらこちらへ歩いて来る。「たすかのじょおびそういっしょうけんめいく助けてえ」と彼女は脅えきった相で一生懸命ついて来る。しばらいろじょうたついえやいえや暫く行くと、路上に立はだかって、「家が焼ける、家が焼けこどもなわめろうじょであけむりくずる」と子供のように泣喚いている老女と出逢った。煙は崩かおくたてのぼきゅうほのおいきはげれた家屋のあちこちから立昇っていたが、急に焔の息が烈ふくはしすしく吹きまくっているところへ来る。走って、そこを過ぎると、みちへいたんえいばしたもとわたしたちき道はまた平坦となり、そして栄橋の袂に私達は来ていた。ひなんしゃいしゅうここには避難者がぞくぞく蝟集していた。げんきひとひけだれはしうえがんば

「元気な人はバケツで火を消せ」と誰かが橋の上に頑張っわたしせんていやぶほうみちている。私は泉邸せんていの藪の方へ道をとり、そして、ここでKとははぐれてしまった。たけやぶなたおにいひとぜいみちしぜん

その竹藪は薙ぎ倒され、逃げて行く人の勢で、径が自然とひらみあじゅもくちゅうくうそ拓かれていた。見上げる樹木もおおかた中空で削ぎとられてかわそゆいしょめいえんいまきずおり、川に添った、この由緒ある名園も、今は傷だらけのすがたかんぼくそばゆたしたいなげだ姿であった。ふと、灌木の側にだらりと豊かな肢体を投出

うずくまちゅうねんふじんかおたましいぬして蹲っている中年の婦人の顔があった。魂の抜けはかおみなにかんせんてたその顔は、見ているうちに何か感染しそうになるのであっかおでくた。こんな顔に出喰わしたのは、これがはじめてであった。が、きかいかおごわたしでくそれよりもっと奇怪な顔に、その後私はかぎりなく出喰わさねばならなかった。

かわぎしでやぶわたしがくとひとかたまりであ川岸に出る藪のところで、私は学徒の一塊と出逢っ

こうじょうにだかのじょたちいちかるふしょうた。工場から逃げ出した彼女達は一ように軽い負傷をしめまえしゅつげんできごとしんせんおののていたが、いま眼の前に出現した出来事の新鮮さに戦きなかえげんきしゃべあちょうけいすがたがら、却って元気そうに喋り合っていた。そこへ長兄の姿あらわいちまいかたてびんもいが現れた。シャツ一枚で、片手にビール瓶を持ち、まず異じょうこうがんみわたたてものくずでん状なさそうであった。向岸も見渡すかぎり建物は崩れ、電ちゅうのこひてめぐわたしせまかわ柱の残っているほか、もう火の手が廻っていた。私は狭い川ぎしけいこしおだいじょうぶきもち岸の径へ腰を下ろすと、しかし、もう大丈夫だという気持がし

ながあいだおびやついきた。長い間脅かされていたものが、遂に来たるべきものが、ききもちわたしじぶんい来たのだった。さばさばした気持で、私は自分が生きながらえかえりふたひとたすていることを顧みた。かねて、二つに一つは助からないかもしおもいまおのれいれないと思っていたのだが、今、ふと己が生きていることと、いみわたしはじその意味が、はっと私を弾いた。かわたしこころつぶや

このことを書きのこさねばならない、と、私は心に呟いときわたしくうしゅうしんそうほとんた。けれども、その時はまだ、私はこの空襲の真相を殆しど知ってはいなかったのである。

たいがんかじいきおいまきがわほて対岸の火事が勢を増して来た。こちら側まで火照ほてりはんしゃくまんちょうかわみずざぶとんひたあたまが反射して来るので、満潮の川水に座蒲団を浸しては頭だれくうしゅうさけしろきにかむる。そのうち、誰かが「空襲」と叫ぶ。「白いものを着こかげかくこえみなやぶおくたものは木蔭へ隠れよ」という声に、皆はぞろぞろ藪の奥へはいようさんさんふそそやぶむかひも匐って行く。陽は燦々と降り灑ぎ藪の向うも、どうやら火が燃ようすしばらいきころなにごとえている様子だ。暫く息を殺していたが、何事もなさそうなかわほうでくこうがんかじさらおとろので、また川の方へ出て来ると、向岸の火事は更に衰えていねっぷうずじょうはしこくえんかわなかあおない。熱風が頭上を走り、黒煙が川の中ほどまで煽られてくとききゅうずじょうそらあんこくかおも来る。その時、急に頭上の空が暗黒と化したかと思うと、はいぜんおおつぶあめおきあめほてや沛然として大粒の雨が落ちて来た。雨はあたりの火照りを稍やしずしばらはてんき々鎮めてくれたが、暫くすると、またからりと晴れた天気にもたいがんかじいまきしどった。対岸の火事はまだつづいていた。今、こちらの岸にはちょうけいいもうときんじょみしかおふたみっみう長兄と妹とそれから近所の見知った顔が二つ三つ見受け

试读结束[说明:试读内容隐藏了图片]

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