日本文学名作系列:纹身(日文版)(txt+pdf+epub+mobi电子书下载)


发布时间:2020-05-31 00:23:28

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作者:谷崎润一郎

出版社:华东理工大学出版社

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日本文学名作系列:纹身(日文版)

日本文学名作系列:纹身(日文版)试读:

纹 身

そひとびとおろかいとうととくもいよ

其れはまだ人々が「愚」と云う貴い徳を持って居て、世なかいまはげきしあじぶんとのさまの中が今のように激しく軋み合わない時分であった。殿様やわかだんなのどかかおくもごてんじょちゅうおいらんわら若旦那の長閑な顔が曇らぬように、御殿女中や華魁の笑

たねつじょうぜつうちゃぼうずほうかんいの種が盡きぬようにと、饒舌を売るお茶坊主だの幇間だいしょくぎょうりっぱそんざいいほどせけんのと云う職業が、立派に存在して行けた程、世間がのんびいじぶんおんなさだくろうおんなじらいやおんななるりして居た時分であった。女定九郎、女自雷也、女鳴かみとうじしばいくさぞうしうつくものきょう神、――当時の芝居でも草双紙でも、すべて美しい者は強しゃみにくものじゃくしゃだれかれこぞうつく者であり、醜い者は弱者であった。誰も彼も挙って美しつとあげくてんぴんからだえぐそそこまでからんと努めた揚句は、天稟の体へ絵の具を注ぎ込む迄にほうれつあるいけんらんせんいろそころひとびとなった。芳烈な、或は絢爛な、線と色とが其の頃の人々のはだおど肌に躍った。めどうかよきゃくみごとほりものかごかきえら

馬道を通うお客は、見事な刺青のある駕籠舁を選んでのよしはらたつみおんなうつくほりものおとこほばく乗った。吉原、辰巳の女も美しい刺青の男に惚れた。博ととびものちょうにんまれさむらいいれずみ徒、鳶の者はもとより、町人から稀には侍なども入墨をときどきりょうこくもよおほりものかいさんかいしゃした。時々両国で催される刺青会では参会者おの/\はだたたたがいきばついしょうほこあひょう肌を叩いて、互に奇抜な意匠を誇り合い、評しあった。

せいきちいわかほりものしうであさくさ清吉と云う若い刺青師の腕きゝがあった。浅草のちゃりぶんまつしまちょうやつへいじろうおとめいしゅ文、松島町の奴平、こんこん次郎などにも劣らぬ名手でもはやなんじゅうにんひとはだかれえふでしたあると持て囃されて、何十人の人の肌は、彼の絵筆の下にぬめじひろほりものかいこうひょうはくほりものおお絖地となって擴げられた。刺青会で好評を博す刺青の多くかれてだるまきんぼりとくいいは彼の手になったものであった。達磨金はぼかし刺が得意と云からくさけんたしゅぼりめいしゅたたせいきちまたきけいわれ、唐草権太は朱刺の名手と讃えられ、清吉は又奇警こうずようえんせんなしな構図と妖艶な線とで名を知られた。ほうこくくにさだかぜしたうきよえしとせいい

もと豊国国貞の風を慕って、浮世絵師の渡世をして居ほりものしだらくせいきちえかきたゞけに、刺青師に堕落してからの清吉にもさすが畫工らしりょうしんえいかんのこいかれこころひほどい良心と、鋭感とが残って居た。彼の心を惹きつける程のひふほねぐもひとかれほりものあがなわけ皮膚と骨組みとを持つ人でなければ、彼の刺青を購う訳にはいかもらいっさいこうず行かなかった。たま/\描いて貰えるとしても、一切の構図とひようかれのぞそうえたがたはりさきくつう費用とを彼の望むがまゝにして、其の上堪え難い針先の苦痛ひつきふつきを、一と月も二た月もこらえねばならなかった。わかほりものしこころひとしかいらくしゅくがん

この若い刺青師の心には、人知らぬ快楽と宿願とがひそいかれひとびとはだはりつさときしんくちふく潜んで居た。彼が人々の肌を針で突き刺す時、真紅に血を含

ふくあがにくうずたたいていおとこくるうめんで脹れ上る肉の疼きに堪えかねて、大抵の男は苦しき呻ごえはっそうめはげはげほどかれふき声を発したが、其の呻きごえが激しければ激しい程、彼は不しぎいがたゆかいかんほりものこと思議に云い難き愉快を感じるのであった。刺青のうちでも殊にいたいしゅぼりようことかれ痛いと云われる朱刺、ぼかしぼり、―――それを用うる事を彼はことさらよろこいちにちへいきんごろっぴゃくほんはりさいろ殊更喜んだ。一日平均五六百本の針に刺されて、色あよたゆつかでくひとみなはんしはんしょう上げを良くする為め湯へ浴って出て来る人は、皆半死半生ていせいきちあしもとうたおしばらみうごの体で清吉の足下に打ち倒れたまゝ、暫くは身動きさえもできむざんすがたせいきちひやなが出来なかった。その無残な姿をいつも清吉は冷やかに眺めて、さぞいた

「嘸お痛みでがしょうなあ」いこころよわらい

と云いながら、快さそうに笑って居る。いくじおとこちしごくるくち

意気地のない男などが、まるで知死期の苦しみのように口ゆがはくひめいことを歪め歯を喰いしばり、ひい/\と悲鳴をあげる事があると、かれ彼は、まええどこしんぼうせいきち

「お前さんも江戸っ児だ。辛抱しなさい。―――この清吉のはりときいて針は飛び切りに痛えのだから」いなみだおとこかおよこめみ

こう云って、涙にうるむ男の顔を横目で見ながら、かまほいがまんものきもすまゆわず刺って行った。また我慢づよい者がグッと胆を据えて、眉ひとこらい一つしかめず怺えて居ると、まえみかつぱりしゃ

「ふむ、お前さんは見掛けによらねえ突っ張者だ。―――だがみいまうずだ見なさい、今にそろ/\疼き出して、どうにもこうにもたまらないようになろうから」しろはみわら

と、白い歯を見せて笑った。

かれねんらいしゅくがんこうきびじょはだえ彼の年来の宿願は、光輝ある美女の肌を得て、それへおのたましいとげこことおんなそしつようぼう己れの魂を刺り込む事であった。その女の素質と容貌とつちゅうもんただうつくかおうつくに就いては、いろ/\の注文があった。啻に美しい顔、美

はだかれなかなかまんぞくことできえしい肌とのみでは、彼は中々満足する事が出来なかった。江どじゅういろまちなひびおんないおんなしらかれ戸中の色町に名を響かせた女と云う女を調べても、彼のきぶんかなあじちょうしよういみ気分に適った味わいと調子とは容易に見つからなかった。まみひとすがたこころかさんねんよんねんむなあこがだ見ぬ人の姿かたちを心に描いて、三年四年は空しく憧かれそねがすいれながらも、彼はなお其の願いを捨てずに居た。

ちょうどよんねんめなつふかがわりょうりやひら丁度四年目の夏のとあるゆうべ、深川の料理屋平せいまえとおときかれかどぐちまいかご清の前を通りかゝった時、彼はふと門口に待って居る駕籠のすだれましろおんなすあしいき簾のかげから、真っ白な女の素足のこぼれて居るのに気がつするどかれめにんげんあしかおおなふくいた。鋭い彼の眼には、人間の足はその顔と同じように複ざつひょうじょうもうつおんなあしかれと雑な表情を持って映った。その女の足は、彼に取ってはとうとにくほうぎょくおやゆびおここゆびおわせんさい貴き肉の宝玉であった。拇指から起って小指に終る繊細ごほんゆびととのかたえしまうみべといろな五本の指の整い方、絵の島の海辺で獲れるうすべに色のかいおとつめいろあたまきびすみせいれつ貝にも劣らぬ爪の色合い、珠のような踵のまる味、清洌ないわまみずたあしもとあらうたがひふじゅんたく岩間の水が絶えず足下を洗うかと疑われる皮膚の潤沢。

あしおとこいきちこふとおとこふこの足こそは、やがて男の生血に肥え太り、男のむくろを蹈あしあしもおんなかれながねんみつける足であった。この足を持つ女こそは、彼が永年たずおんななかおんなおもせいきちおどねあぐんだ、女の中の女であろうと思われた。清吉は躍り

むねそひとかおみかごあとおたつ胸をおさえて、其の人の顔が見たさに駕籠の後を追いかけにさんちょういそかげみたが、二三町行くと、もう其の影は見えなかった。

せいきちあこがはげこいかわそとしく清吉の憧れごゝちが、激しき恋に変って其の年も暮れ、ごねんめはるなかおこあひあさかれふかがわ五年目の春も半ば老い込んだ或る日の朝であった。彼は深川さがちょうぐうきょふさようじさびたけぬえん佐賀町の寓居で、房楊枝をくわえながら、錆竹の濡れ縁に

おもとはちながいにわうらきどおとな萬年青の鉢を眺めて居ると、庭の裏木戸を訪うけはいがし

そでかきみなこむすめはいきて、袖垣のかげから、ついぞ見馴れぬ小娘が這入って来た。せいきちなじみたつみはおりよつかしゃ

それは清吉が馴染の辰巳の藝妓から寄こされた使の者であった。ねえこはおりおやかたてわたなにうらじ

「姐さんから此の羽織を親方へお手渡しゝて、何か裏地えもようかくだたのもうへ絵模様を畫いて下さるようにお頼み申せって………」むすめうこんふろしきなかいわいとじゃく

と、娘は鬱金の風呂敷をほどいて、中から岩井杜若のにがおえつつおんなはおりいちつうてがみと似顔畫のたとうに包まれた女羽織と、一通の手紙とを取り

试读结束[说明:试读内容隐藏了图片]

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