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发布时间:2020-06-11 13:03:48

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作者:王琳

出版社:上海交通大学出版社

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日本企业工资制度改革实态研究(日文版)

日本企业工资制度改革实态研究(日文版)试读:

前言

本书聚焦于20世纪末21世纪初日本的大企业所进行的工资改革,源于对日本企业管理方式的关注。众所周知,日本企业管理方式在日本经济腾飞的年代一直受到包括欧美在内的世界各国的赞赏,也曾被认为是日本经济高速成长的一个原因。日本企业管理方式中的“终身雇佣制度”、“年功序列制度”、“企业内工会制度”这三个人事管理制度作为代表,甚至被称为日本企业管理制度中的三大“神器”。但是,20世纪90年代以后,随着日本经济的低迷,各国学习日本的热情逐渐冷却下来,在日本国内对日本企业管理方式的批判,特别是质疑日本企业的“年功序列制度”这种人事工资待遇制度的声音不断增多。从20世纪90年代开始,日本很多大企业都开始进行工资制度改革,改革的内容之一就是变“年功”工资制度为注重成果和业绩的“成果主义”工资制度,改革的适用对象也从管理层扩大到普通员工。

工资制度是人事管理制度中非常重要的项目,工资制度对劳动者的激励作用最为直接。所以本书正是以此为着眼点,探讨日本企业工资制度的改革对日本劳动者的激励作用。日本企业的年功工资制度主要是由两部分构成:一是根据劳动者的年龄、性别决定的“属人”工资;二是按照职能资格制度考核的“职能”工资。而成果主义工资制度下,基本工资主要包括三种:一是根据考核评定的“职能”工资;二是根据工作内容决定的“职务”工资;三是按照成果和业绩考核的“成果”工资。

总体来看,日本大企业的工资制度改革主要是废除过去的“年龄”工资,缩小按照工龄逐年递增的工资项目,取而代之的是反映工作内容、工作成果的工资项目,根据业绩增加或减少工资。成果主义工资制度的特点主要是以工作为基准按照劳动者在工作上的表现来决定工资。不过,各大企业的成果主义工资制度改革在形式上并不完全相同,评定工资时的内容也不一样。比如,丰田公司采用的是“职能基准工资”和“职能个人工资”两种工资项目;武田药品只采用了“范围职务工资”一种项目。

过去在终身雇佣制度下,日本企业以集体主义为核心,追求企业内部“和”,劳动者以企业为家,兢兢业业工作直到退休。劳动者入职初期虽然工资收入低,但是随着在企业工作时间的积累以及劳动者结婚、生子等家庭情况的变化,收入会逐渐增加,退休之后还会从企业领取大笔退休金。因此年功工资制度在一定程度上能激励劳动者。然而,随着终身雇佣制度的不再维持,年功工资制度无法发挥作用,而成果主义工资能即时体现劳动者的工作绩效,促使劳动者更加努力,提升工作积极性。再加上国际大环境的影响,所以很多企业都开始采用成果主义工资制度。

但是,在日本大企业工资制度的改革中,也有阻碍成果主义工资制度激励作用的因素。比如最主要的因素是工作业绩评价上的不公正。另外工作本身是否能够满足个人自我实现的要求、对企业未来的担忧等都会阻碍工作积极性,所以要真正发挥成果主义工资制度的激励作用,企业要制定好相应的人事管理制度:公平公正的评价制度、劳动者个人职业发展支援制度、尊重个人的企业文化建设等等。

本书在撰写的过程中得到日本成蹊大学经济学部教授相原修先生的指导,在此深表谢意。也感谢成蹊大学经济学部的义村敦子教授、铃木滋教授等先生的指导和建议。

感谢上海交通大学外国语学院的资助和支持。

最后感谢上海交通大学出版社的何勇先生,他的支持和帮助促成了本书的出版。はじめに

この本では日本企業の成果主義賃金制度改革に焦点を当てて、成果主義賃金と働く人のモチベーションとの関わりを明らかにしてみたいと思う。

日本企業の成果主義賃金制度改革を考察する動機はもともと日本的経営への関心から始まったのである。周知のように、日本経済の好況の時代では日本的経営は欧米をはじめとする各国の学者に賞賛され、日本経済の高度成長の一因と認められた。その中で日本的人事管理を代表した終身雇用、年功序列、企業別組合は三種の神器とさえ呼ばれているようになった。しかし、1990年代に入り、バブル経済崩壊後、日本経済の長引く不況に伴って「日本に学べ」という熱意が冷めてきたため、日本においても日本的経営、特に年功序列の人事賃金処遇制度に対する批判が強かった。一方、日本の企業側を見ても、年功主義賃金に対する見直しをしようとする動きも非常に強かった。1990年代の始め頃から大企業をはじめ、成果主義賃金制度を導入した企業は決して少数ではなかった。しかも、成果主義賃金の導入は管理職から組合員層へと拡大されてきた。実際、年功による賃金に対する見直しは1960年代日経連が提唱した能力主義人事管理のもとですでに始まった。だが、能力主義だといっても、結局、年功的色彩の濃い能力主義賃金として運用されてきたと言われた。すると、現在行われている成果主義賃金制度改革は従来の年功主義賃金制度から完全に脱皮することができるかについては、非常に興味深い研究課題であると思う。

その問題に関わる課題として、成果主義賃金制度と従来の年功賃金制度との違い、成果主義賃金の有効性をはっきりさせておかなくてはならないと思う。そこで、本書で日本企業の成果主義賃金制度改革の内容、特に賃金項目の構成の変化から成果主義賃金と年功主義賃金との違いを捉えようとする。そして、成果主義賃金の有効性に関して、成果主義賃金は働く人を動機付けるかどうかに重点をおきたいと思う。なぜかと言えば、賃金制度は人的資源管理制度の一環として、合理的な賃金制度なら働く人へのインセンティブとなり、働く意欲を高めるはずであると思う。逆に言えば、働く人が動機付けられたかどうかということも、働く人が成果主義賃金を受け入れたかどうかに関わっている。成果主義賃金制度は働く人に受容されないとすれば、取り入れられる必要もなかろう。日本企業において成果主義賃金処遇体系を導入した狙いも成果主義賃金で働く意欲を高め個人の貢献を大きく出すためである。成果主義賃金制度改革が経営者の期待どおりに、インセンティブ的機能が果たしたかどうかは働く人の勤労意識をみて検証することができるにちがいない。

日本企業の成果主義制度改革を考察する意義はそれだけではない。成果主義賃金制度そのものに対する研究は合理的な報酬制度に関するものとして非常に重要な課題であると思う。成果主義賃金制度を導入するのは日本企業だけではなく、世界でも普及された傾向が見られる。成果主義賃金を代表する業績による賃金は1980年代からアメリカ企業で導入されてきたのである。中国では改革開放以後、賃金制度は以前と比べて大きく変わってきたが、つい近年、外資企業、合弁企業の賃金制度に影響を与えられつつある国有企業、公的研究機構においては抜本的な賃金制度改革も成果主義賃金制度の形をとったように思われる。したがって、日本企業の成果主義賃金制度改革に対する考察から得る経験と教訓には成果主義賃金を取り入れたすべての企業に多かれ少なかれ役に立つものがあるに違いないと思う。そこに研究の意義もあり、中国の制度にとっても、なんらかの示唆が得られれば、幸いと思う。

なお、本研究の研究対象を日本の大企業の賃金制度にする。日本の大企業にするのは日本で企業規模によって賃金制度が違い、大企業のほうが年功序列の特徴がよりはっきり見られたからである。そして、大企業の賃金制度は中小企業にとっての手本であるため、大企業の改革の特徴を捉えたら、中小企業の改革の様子を覗くことができるであろう。

日本企業の賃金制度改革は成果主義人事制度改革の一分野である。そして、賃金制度に関わったものが多いため、一々研究する余裕はないので、ここでは賃金制度における個別賃金の決定方式を中心に考察してみようと思う。具体的には賃金決定の基準を反映した基本給の構成項目に焦点をあてようとする。勿論基本給のほかに、成果主義賃金の重要な項目である賞与も考察の対象として考える。

日本企業の賃金制度に関する考察では比較方法を用いたいと思う。主に、年功主義賃金と成果主義賃金との比較、ケーススタディとする企業間の比較を通して、成果主義賃金制度の特徴をはっきりさせようとする。働く人のモチベーションに関する考察は主に日本で公開された調査データ―を使って分析してみたい。調査データ―の主なソースは日本労働政策研究·研修機構が行った調査を使用する。というのは調査機構の信用、調査規模の大きさ、サンプルの数量および調査の方法、どの面から見てもその調査結果は根拠として信用できると思うからである。

この本は以下の順序で考察していくことにする。第1章では、主に賃金の仕組み、動機付け理論及び賃金とモチベーションとの関わりに関して考察する。第2章では日本企業の賃金体系の変遷を考察してみる。主に年功主義賃金から成果主義賃金へと変わった賃金項目の変化を捉えて、成果主義賃金の特徴を明らかにさせたい。第3章ではケーススタディとしてケース企業の賃金制度改革を考察する。二社の企業の賃金制度を比較して日本企業の成果主義賃金制度改革の問題をいかに解決したらいいかについて考えてみる。第4章では成果主義賃金のインセンティブ機能を分析し、成果主義賃金制度改革は働く人のモチベーションを高めるのに機能が果たせるかどうかを考察してみたいと思う。第1章賃金と働く人のモチベーション1.1 賃金に関する用語

最初に賃金に関連する用語の定義を見ていくことにする。(1)

賃金:日本においては労働基準法11条は賃金を賃金·給料·手当て·賞与その他の名称の如何を問わず、労働の代償として使用者が労働者に支払うすべてのものと定義している。ここでは「企業と労働者の交換関係において労働者が提供する労働ないし貢献に対し(2)て、企業がその対価として労働者に支払う経済的報酬」という定義を取る。(3)

給与:賃金は労働者の対価として支払われる金銭で、受け取る労働者にとっては生活費をまかなう原資、支払う使用者からみると生産活動に必要な費用と限定した捉え方をされるのに対して、給与は俸給や賃金さらに諸報酬を含めたより広範囲な意味をもつ。(4)

報酬:仕事の見返りとして人が受け取るすべての利益のことを言う。人的資源管理では賃金、賞与、年金、休暇、福利厚生などを報酬として捉える。

賃金制度:「個々の労働者に支払われる賃金の決め方、支払い方の総体を言い、賃金構成ないし体系及び賃金の形態を総称するも

(5)の」。すなわち、賃金構成、賃金体系及び賃金形態を含むものであり、賃金水準以外の問題を賃金制度と言える。本書では主に個人の賃金額の決定方法、あるいは総人件費を個人に分配するための方法である賃金制度に関して考察しようと思う。個人への賃金を支払う方法は大きく分けると、インプットに基づくシステムとアウト(6)プットに基づくシステムの2種類がある。インプットに基づくシステムでは、時間の経過、経験、スキルなど人が仕事に対してインプットするものと連動して賃金が決まる方法であるのに対して、アウトプットに基づくシステムでは、仕事の成果と賃金が連動して決められる方法であると言われている。また賃金の決定方法を「人」の属性にもとづき賃金を支払う方法と「仕事」にもとづき賃金を支払う方法と2種類に分けて捉えることにする。

賃金体系(賃金システム):賃金制度に近い概念であるが、賃金を決定する構成項目に焦点を当てている。『新版労働用語辞典』(575頁)では、賃金体系を「個別賃金決定のルールをさしたもの」であると定義したが、主な内容は①個々の労働者に支払われる賃金がどのような種類の賃金の項目の組み合わせによっているか、②基本的賃金項目と諸手当並びに付加的賃金項目をいかに組み合わせるか、③各賃金項目はどのような算定方法によっているかというようなことである。以下では賃金体系を賃金の構成項目の組み合わせであると理解しておいた。(7)

基本給:年齢·学歴·勤続年齢·能力·資格·地位·職務の従業員の属性または従事する職務を基準に決める給与であり、本給、本人給とも呼ばれている。賃金の基本的部分で、しかも定額制によって決められているものである。1.2 賃金の仕組みと賃金の決め方

労働費用の構成から賃金の仕組みを見てみる。労働費用は、企業が労働者を雇用するために支出する費用である。現金給与と現金給与以外の費用からなっている。現金給与以外の費用には退職金、法定福利費、法定外福利費、教育訓練費などがある。現金給与は定期給与と賞与·一時金に分けられている。定期給与は毎月決まって支給するものであり、所定労働時間の労働に対する支払う所定内給与と所定労働時間以外の労働に対する支給する所定外給与からなっている。所定内給与は基本給と手当てがある。図1‐1は労働費用の構成である。賃金は現金給与に関するものである。図1-1 労働費用の構成

日本の場合、賃金の仕組みは月給とボーナスからなっている。その中に基本給がもっとも重要な部分である。基本給は年間賃金の約6割を占めているが、賞与や退職金なども基本給を基準にして金(8)額が決められるので、基本給は総収入に8割ぐらい占めると言ってもいいくらいである。その理由で、本書では日本企業における賃金、特に基本給の決め方に焦点を当てて考察してみたいと思う。

個別賃金の決定に関わる賃金制度は内部公平性と外部競争性という二つの基準に設定されるべきである。内部公平性基準は企業内の従業員間の賃金序列が決まり、外部競争性の基準は賃金水準(賃金の絶対額)の設定に関わる。内部公平性の基準にあたっては、欧(9)米では職務基準を用い、日本では人基準を用いてきた。内部公平性の基準は働く人から受容されるのが重要である。外部競争性の基準にあたっては、労働市場の賃金水準によって賃金を設定するのは人材の雇用·定着に大きく影響するが、日本企業の場合は長期雇用なので、労働市場の需給関係はあまり賃金に影響しないと言われる(10)こともある。1.3 モチベーション理論

人間はなぜ働くかという問いにあたって、古典経済学的人間観に立ったリカードの「経済人」の考えは人間が働くのが人間のうちに潜む「無限の営利欲」によるためであった。そのような経済人という考えは経済学の分析のために仮定されたものである。しかしながら、現実の人間の管理を行う場合もそのような人間観に立ち、人事管理では賃金をどのような形で与えたら最も効果的なのかに関する研究が多く行われた。人間は誘因としての賃金を求めようとして(11)働くものであるという考えに立って効果的な賃金の支払方法として、タウン(Towne,H.R.)の分益制度、ハルシー(Halsey,F.A.)の割増賃金制度、ローワン(Rowan,J.)の可変分配率制度などがあったが、いずれも賃金を誘因として考えていた。ところが、more money → more outputsという仮定に基づいた理論は単純な人間機械観に成り立ったものに過ぎない。今日の人事管理においてその意義は完全に失っているわけではないにもかかわらず、ホーソン実験で明らかになったのは「現実の人間は、けっ(12)して経済的動機だけで行動するものではない」というのである。これに対して、人間関係管理の一分野であるモチベーション(動機付けとも言う)の理論が数多くの成果をあげ、現代人的資源管理においてそれらの研究に基づき有効なインセンティブとしての管理施策が追求されている。(13)

モチベーションとは目標達成に向かう働く人間の努力水準(14)を決める意志ないし心理的プロセスである。つまり、要求→動因→誘因(目標)の過程のすべてをさしてモチベーションという。企業においては、働く人が強制によって仕事をさせられるより、自発的に働くほうが最も効果的であると考えられる。自発的仕事は動機付けられた行動である。自発的に働くのは働く人にいろいろな要求があり、要求から生じた動因とその要求を満足させる誘因との関係によるのである。働く人は「経済人」の単純な経済的動機だけで働くのではなく、人それぞれ欲求をもって働くのである。

マズローの欲求段階説においては、人間には①生理的欲求、②安全性の欲求、③社会性の欲求、④自尊性の欲求、⑤自己実現の欲求という五つの欲求があり、これらの欲求には一定の順序があるという。つまり,人間はまず一番下層の生理的欲求を満たすように行動して、これが満たされると次の安全性の欲求を満たすように行動するという最後の自己実現の欲求に至るまで段階的に実現させるプロセスが続くと仮定されている。

マズローの欲求段階説に基づき働く人の欲求を明らかにする研(15)究は、数多く存在する。例えば、正戸の調査で明らかになったものであるが、低賃金労働者のモチベーションは「生活類型」「生活要望」であるとし、賃金、就業の確保ということに強く動機付けられており、高賃金労働者のモチベーションは「精神的要望」という段階に上昇し、「技術指導」、「作業上の意見」などを強くほしがっていたという。(16)

また、表1-1のようにマイヤー(Maier,N.R.F.)は職場によって従業員の要望が違うという調査もあった。さらに労務管理研究会では、働く人の労働意欲をまとめて誘因としての人事管理方策を図1-2のように示してみる。表1-1 異なった職場の従業員の要望事項の順位表(マイヤー)出所:村井『動機付けと人間観の心理学』61頁。図1-2 労働者の意欲の構造

動機付け理論として重要な地位を占めるもう一つの理論はマグレガーによって唱えたX理論とY理論である。マグレガーはこれまでの人事管理論や経営者の経営理論に見られる伝統的人間観をX理論と名づけて、一方、働く人の自由な能力の発揮、創意工夫への期待が結局企業を繁栄させ、同時に個々働く人の生きがいにも通じるのだという人間観をY理論と名づけていた。マグレガーはX理論に対して、新しい人間観にたつY理論を提唱した。つまり、働く人は統制によって仕事に打ち込まれるべきではなく、目標に向かって自発的に立ち向かせるべきものだと考えられる。それゆえ、働く人の欲求を尊重する新しい人間観にたつ管理こそ有効的であろう。マグレガーのY理論にたつ管理手法として目標管理制度があげられる。

ハーツバーグは実証的研究をもとにして動機付け―衛生理論を提唱した。ハーツバーグは、働く人が満足を感じる要因を動機付け要因とし、不満を感じる要因を衛生要因と呼んだ。表1-2のように、彼の調査では、満足要因に関わるのは仕事の内容、その達成、その結果に対する承認など働く人の心理に関わるものが多く、不満要因に関わるのは会社の政策、監督など職場環境に関わるものが多く見られた。動機付け―衛生理論によれば、働く人のモチベーションを高めるには、賃金が多いというようなことによるべきでなく、仕事そのものに働く人自身を生かすことができるかどうかによるべきであると考えてもいい。無論、その理論によって給料を衛生要因にすれば、まず給料には働く人を満足させなければならないと考えられる。ところが、ハーズバーグの二要因理論は衛生要因と動機付(17)け要因の区分が曖昧であるという指摘があり、給料の額が自己の有能感の知覚、将来性に影響をするものなら、給料は衛生要因であるとは言えないという批判であった。表1-2 ハーズバーグの二要因

動機づけ理論としてはさらにERG理論、達成動機理論、目標設定理論、公平理論と期待理論が挙げられるが、賃金管理に関係があると思う理論として、公平理論と期待理論についても説明しておこう。表1-3 公平感ないし不公平感を左右する要素(18)

アダムズ(Adams)の公平理論は現在の自分と比較可能な人間と比べた場合に生じる不公平感により行動が喚起されるという考えである。交換関係に成り立つ企業と働く人の関係は従業員から見ると、自分がインプットを提供することと企業から報酬を受け取ることである。表1-3で見られるとおり、公平感を左右する要素は多様である。そして、比較対象となる人間、比較時の状況が公平感か、それとも不公平感が生じるのに影響する。例えば、同じ貢献でありながら同僚より報酬が低く与えられたと思った場合、その働く人には不公平感が生じる。不公平感をなくすため、自分の貢献を低下させたりするようなモチベーションを損なう行動が喚起されると考えられる。(19)

期待理論では人間の行動の強さに影響を与えるのは期待と誘発性である。ある行動が結果をもたらす期待とその結果の誘発性をかけ行動の強さが決まるというが、期待と誘発性の両方が高い場合、人間の行動は最も強まると考えられる。ポーターとローラー·モデル(表1-4)では働く人の行動を説明するのに、期待を、働く人の行動が業績をあげるという期待と、その業績が企業から報酬をもたらすという期待の二つに分けて考えた。働く人の行動の強さを決定するのに複数の次元の二種類の期待が総合的に影響を与えると定式化された。これによって、働く人のモチベーションを高める方法としては、従業員の能力を高める訓練をしたりして業績をあげる期待を高める手法と、組織の報酬システムを改善したりするような報酬をもたらす期待を高める方法が考えられる。表1-4 ポーター&ローラーの期待理論モデル1.4 賃金と働く人のモチベーション

働く人のモチベーションを高めるには、モチベーション理論それぞれに基づき人的資源管理施策にモチベーション改善策が入れられているが、組織変革論、組織風土論、集団理論などに関する研究のもとでモチベーションを高める施策も考えられているようになっ(20)ている。林(2000)がアメリカにおける実証研究の結果にもとづき、組織メンバーの仕事モチベーションの生成·規定要因を体系化したものであるが、図1-3のとおり、働く人のモチベーションに関しては「パーソナリティ→職務態度→モチベーション→職務業績·欠勤·離職」という流れが存在しているが、各要素の間には相互作用関係がある。また、林(2000)は職務態度がモチベーションに作用する直接的決定要因であり、職務態度を決定する重要な要因であるパーソナリティの中核は価値意思であると指摘している。

図1-3から見ると、働く人のモチベーションを高める有効な管理施策はどのように定めたらいいか決して簡単な問題ではない。特に企業で働く人はみんな同じパーソナリティを持っているわけではないため、働く人それぞれに対して有効な管理施策を取るのがもっとも理想的であるが、現実では可能性が低そうである。そのため、管理を行う際、働く人の大多数が持っている欲求などを把握するか、またはチームのニーズを把握するかによって、働く人の仕事へのモチベーションを高める施策を高めるのはより簡単になり、有効性も高まるであろうと思う。図1-3 組織メンバー全般のモチベーションのメカニズム出所:林『組織心理学』2000の118頁。

さて、企業において人的資源管理は作業能率促進機能、組織統(21)合機能と変化適応機能が果たすのに期待されているが、賃金管理は人的資源管理の一環として企業の戦略に応じて、労働力の調達、働く人のモチベーションの向上による貢献度の引出し、労使関係の安定などに役立つと考えられる。賃金管理は具体的にどんな目的で行われたらいいか、企業の戦略や経営目標によるので、個々の企業において自分企業にふさわしい賃金制度を取るのが大切であろう。

企業の目標を実現させるにはインセンティブとしての賃金制度を活用するべきであるが、賃金のインセンティブ機能が有効的に果たせるには働く人の欲求をまずは正しく把握しなくてはならない。前節のモチベーション理論によれば、合理的経済報酬はモチベーションに作用する要素である。賃金は経済的報酬の重要な部分であり、働く人の生活維持·向上に直接影響を与える。それだけでなく、働く人の価値を間接に示すものでもあると広く認められている現在では、賃金は働く人の社会的欲求、自尊的欲求を満たすものでもあると思われ、働く人のモチベーションに大きく作用すると言える。

ただし、モチベーションの向上には賃金はうまく機能できない場合があるかもしれない。これはモチベーション理論に対する実証研究で明らかになった。すでに高い賃金を支払われた働く人にとって、もっと高い賃金より、むしろ業務の達成感や仕事のやりがいを感じさせるなどによって動機付けられるのが有効であろう。それゆえ、インセンティブとして賃金を含む合理的な報酬システムを作ろうとすれば、働く人は自分自身を、自分の仕事を、そして自分の賃金をどう見ているかに対してはっきり理解する必要がある。

ちなみに、賃金制度は人的資源管理の一環なので、ほかの管理施策と深く関わっている。特に人事考課制度は個人賃金の決定に大きく影響するため、インセンティブとなる賃金であるかどうか、人事考課の公平公正によって影響されると言える。働く人に納得してもらえない評価であれば、その評価による賃金には満足度が低いと考えられるのである。(1)須田『日本型賃金制度の行方』2004の12頁(2)奥林『入門人的資源管理』2005の160頁(3)須田『日本型賃金制度の行方』2004の12頁(4)須田『日本型賃金制度の行方』2004の12頁(5)労働省編『新版労働用語辞典』1987の573頁(6)須田『日本型賃金制度の行方』2004の12頁(7)労働省編『新版労働用語辞典』1987の124頁。(8)須田『日本型賃金制度の行方』2004の6頁。(9)奥林『入門人的資源管理』2005の163頁を参照したが、須田『日本型賃金制度の行方』2004、竹内『人事労務管理』2001などでも指摘された。(10)竹内『人事労務管理』2001の第7章、須田『日本型賃金制度の行方』2003の9頁で指摘された。(11)この時期賃金の支払い方法に関する研究を中心に行う管理は誘因による管理(management by incentive)と呼ばれる。(村井『動機付けと人間観の心理学』1970の5頁)(12)村井『動機付けと人間観の心理学』1970の8頁を引用。(13)上田『組織行動研究の展開』2003の95頁。(14)村井『動機付けと人間観の心理学』1970の54頁(15)村井『動機付けと人間観の心理学』1970の第四章。原文は正戸茂『労働心理』日本経済新聞社「経営管理全書82巻」に所載。(16)村井『動機付けと人間観の心理学』1970の60頁(17)林『組織心理学』2000の125頁。(18)上田『組織行動研究の展開』2003の第5章108-111頁。(19)上田『組織行動研究の展開』2003の第5章111-113頁。(20)林『組織心理学』2000の117頁。(21)奥林『入門人的資源管理』2005の161頁。第2章日本企業の賃金システムの変遷2.1 日本企業の賃金システムの構成項目と賃金決定基準

基本給は年間賃金に占める割合が大きいし、さらに年金·退職金なども基本給を基準にして支給されるので、賃金の中で基本給の影響が大きいと言える。基本給の制度を把握すれば、賃金制度の特色を把握することができるといってもよい。『人事·労務用語辞典』では、基本給は年齢·学歴·勤続年数·能力·資格·地位·職務など従業員の属性または従事する職務を基準に決める給与であると定義された。その定義によれば、基本給の決定基準は人の属性と職務との2種類がある。また、日本の公式の労働統計調査である「就労条件総合調査」において用いられている分類によると、日本企業の賃金システムでは、基本給の決定タイプは3種類があげられる。(1)仕事的要素に基づいて決定する仕事給型であり、具体的項目には職務給、職能給、業績給が挙げられる。(2)属人的要素に基づいて決定する属人給型であり、勤続給、年齢給、学歴給、家族給が挙げられる。(3)総合給型であり、仕事的要素と属人的要素を総合勘案し(1)て決定するタイプである。

日本企業の基本給は上の3種類のいずれか一つか二つ以上の項目を組み合わせて構成される。表2-1から見て、単一型システムを採用している企業の割合が最も高く、基本給を決める要素から言えば、総合給型を採用した企業が多かった。つまり、日本企業は大体属人給と仕事給をあわせた形で基本給を決めるのである。表2-1 賃金体系の分類と採用企業の割合「就労条件綜合調査」2001年。出所:遠藤『賃金の決め方』2005の91頁。

しかし、統計調査で使われた賃金の分類に対して、特に職能給を仕事給にした分類に対して批判がある。例えば、遠藤(2005)(2)は公式の統計調査において、職能給を仕事給型の一つとするのは重大な欠陥であると指摘している。遠藤は「職能給」を「特定しない職務についての労働者の能力に対して支払う」賃金形態であるため、「属性基準賃金」の一つと区分するべきであると主張した。表2-2は遠藤による賃金の決め方に対する分類と統計調査における分類の比較を示している。一般的「仕事給」と「属人給」の分類に対して遠藤は職務の価値·成果を基準にする賃金を「職務基準賃金」と呼び、年功給、職能給などを基準にする賃金を「属性基準賃金」(3)と呼ぶ。遠藤のほかに、須田(2004)は日本企業の能力要素などによる個人の賃金決定を人ベース賃金と言う。それらの分類によって日本企業の基本給の決定要素を整理してみる。つまり、表2-2 賃金体系の分類出所:遠藤『賃金の決め方』2005の77-163頁に基づき作成。

人基準(属性基準)賃金は年齢·学歴·性別·資格·能力など人の属性による賃金で、賃金システムの勤続給、年齢給、家族給、職能給などをさす。

仕事基準(職務基準)賃金は仕事の内容·価値·成果·業績など仕事そのものによる賃金で、賃金システムの職務給、職責給、役割給などをさす。

この基準によってもう少し詳しく分けてみると、年功賃金は勤続·年齢による賃金のことをさすのが一般的であるが、実際の運用(4)においては、職能給は年功的に運用されるケースが多く見られる(5)ので、年功賃金は年齢給·勤続給·職能給などからなった人基準賃金であると言えよう。

次節では日本企業の年功賃金システムの変化を見てみる。2.2 年功賃金システムの推移2.2.1 電産型賃金体系

いわゆる「電産型賃金体系」は1946年に日本電気産業労働組合協議会と経営団体との間で労使交渉によって確立され、多くの企業に広がったものである。図2-1が電産型賃金システムを示している。この体系を見れば、基本給の構成項目は年齢給、家族給、能力給と勤続給からなっている。その中に、年齢と家族数で決まる賃金は生活保障給と言って、ほぼ68%を占めたので、電産型賃金体系は生活保障賃金体系とも呼ばれた。

当時の経済情勢のもとで、働く人が安定に生活することを保障した賃金制度であるため、多くの企業に普及した。しかしながら、世界労連代表日本視察団はその電産型賃金体系に対してこう指摘した。「賃金制度は職業能力、仕事の性質、なされた仕事の質や量に基礎をおいていない。時としてそれは勤労者の年齢や勤続年限に(6)よっている」。そして、報告書では、この賃金決定制度では男女の間の大きな賃金格差が存在すると指摘した。視察団は「同一の量と、質の労働に対する賃金には、労働者の性、年齢による差別をも(7)うけぬこと」と主張したが、当時の労働組合にうけとめられなかったという。それどころか、むしろ年齢による賃金格差はその時代に拡大されている。図2-1 電産型賃金体系表2-3 大学卒の年齢間賃金格差の推移(1955—1970)事務技術者労働者の賃金。出所:笹島「業績·成果を重視した賃金制度の方向」『最新成果主義賃金の実態』2002の20頁一部引用。

電産型賃金システムにおいては働く人の賃金は年齢·勤続年数·家族数、性別など人の属性によって決定されたのである。しかし、このような生活保障賃金システムに潜んだ不合理性が意識されないわけではなかった。問題がありながら維持されたのは労働組合の大(8)きな影響がある。2.2.2 職務給と職能給の導入(9)

職務給とは「各職務についてその必要とする知識、熟練、努力、責任の度合い、作業条件などの職務の困難度と重要度を評価要素として職務の相対的価値を評価し、その価値に応じて決める賃

(10)金」である。表2-4 1966年各賃金体系の実施率

日本経済の発展成長につれて、1950年代に入って経営者による年功賃金体系の見直しの動きが現れ始めた。当時アメリカの人事管理手法も日本に伝わってきたので、賃金は労働者が提供する労働の質と量に応じる労働対価であるというアメリカの人事管理の考え方に基づいて、「同一労働同一賃金の原則から、給与体系も属人的なものから職務本位なものへの転換が要請されている」として、職務給中心の体系へと移行しようと日経連の『日本経済の安定成長への課題と賃金問題』(1960)において要請された。表2-5 職務給採用の阻害条件

だが、職務給は普及されなかった。1966年ダイヤモンド社の調査(表2-4)では職務給の実施率は1.3%しかなかった。職務給がなかなか採用できない原因にあたって、表2-5の「職務給採用の阻害条件」を見て分かると思う。主に職務内容の標準化がむずかしかった、職務権限があいまいで、内容が変化しやすかったという理由が挙げられたが、日本企業は職務に基づいて働く人を採用する雇用制度ではないため、職務内容や権限に関する問題を抱えたのではないかと思う。

また、職務給に関してもう一つの問題がある。職務給には2つの種類がある。単一職務給と範囲職務給の2つある。同一価値職務同一賃率という職務給の基本的考え方から言うと、一つの職務等級に一つの賃金額を定める単一職務給のほうがふさわしいとは言え、日本企業の職務給は年功賃金、従来の人事制度との調和を考えて、職務等級ごとに2つ以上或いは幅のある賃金額を定める範囲職務給を採用して、同一職務給内で年功的要素によって昇給する仕組みで

(11)あるということである。

1950年代から一部の企業において職能給が導入され始めた。職能給は職務遂行能力に応じた賃金であるため、年齢·勤続を強く反映する年功給と仕事を強く反映する職務給の折衷であると思われた。職務給制度では仕事が変化しない限り賃金は頭打ちとなるのを回避するとともに、労働者の柔軟な移動そして能力開発を促進する賃金として、日経連の提唱の中で次第に広まってきた。1990年の厚生労働省の『雇用管理調査』によると、職能給の普及率は5,000人以上の企業は77%、1,000人―4,999人の企業は65%に達したという。職能給は日本大企業で最も重視され普及した賃金形態であったといってもよい。

職能給は職能資格制度に基づいて実施され、能力を基準にして賃金が決まるものである。職能給には3つの型がある。現在従事している職務と直接関係なく能力序列を設定し、各能力段階に必要な能力資格要件を評価して、その区分ごとに賃金を決めるタイプと、職務遂行能力の種類と程度によって区分してその区分ごとに賃金を決めるタイプと、仕事に応じた賃金の幅の中で職務遂行能力を評価してその評価によって賃金を決める(範囲職務給)タイプである。能力資格制度に基づき毎年人事考課によって査定されることになっているが、職務遂行能力の程度を評価して、能力の伸長度に賃金を対応せしめる制度にもかかわらず、勤続年数の増加につれて職務遂行能力も高まる(習熟度の上昇)という考え方のもとで、習熟度に応じて定期昇給が行われるから、勤続年数の増加とともに賃金も増加するという年功的運用になってしまったのである。つまり、職能給は現在の仕事に対してどの程度のこなし方をしているかという働く人の顕在能力に対して支払われる賃金ではなく、働く人のもっている潜在能力、現在利用していない職務遂行能力、将来利用する職務遂行能力を評価して与えられる賃金である。企業側からみる職能給の問題点は表2-6で示したとおり、運用が年功的という点が最も多く、そして発揮能力に応じた昇格·降格ができない、高資格化による人件費の高騰という欠点もあった。それらの問題を見直すため、昇格基準の明確化·厳密化、能力評価基準の見直し、等級別の上限額設定(習熟昇給の見直し)など、職能資格制度に対する改革を行ってきた。それと同時に、基本給における職能給の割合を高め、年齢給の割合を縮小したりして基本給全体の年功的仕組みを弱めようとする動きが見られていた。しかしながら、そのような賃金は能力主義賃金と呼ばれたけれども、年功的賃金から進化してきたものであって、年功賃金体系の人を基準にして賃金が決まるという特徴と変わらないものであると思う。表2-6 職能資格制度の問題点注:複数回答である。社会経済生産性本部「日本的人事制度の現状と課題」2001。出所:笹島「業績·成果を重視した賃金制度の方向」『最新成果主義賃金の実態』2002の9頁。2.2.3 年功主義賃金制度の特徴

年功賃金システムに対した考察のとおり、日本企業の基本給においては勤続年数によって決定される賃金と能力資格制度に基づいて決まる賃金の2種類が主である。そのような人の属性で賃金を決定する制度は昇給にも影響を与える。昇給には年齢や勤続年数の上昇に応じて賃金が上がる年齢昇給と、人事考課によって評価される習熟昇給という2種類の昇給があり、毎年働く人の大部分に対して定期的に昇給を行っている。いわゆる「定昇」のことである。ただし、定昇するとは言え、45歳ぐらいまで毎年少しずつ賃金が上がって行くが、その以後は昇給が止まったり、横ばいになったり、企業によって年齢給を逆に減らしていく場合もある。

このような年齢·勤続年数によって賃金が決まる年功主義賃金制度が日本の大企業で確立された主な原因が幾つかあると思う。

原因の一つは歴史に関わっていると思う。確立された電産型賃金体系の歴史経緯に遡って、当時、戦後間もなく、経済情勢がまだ厳しく、労働力を確保するには働く人に生活保障を提供しなくてはならなかった。それで働く人を安定的に働かせるように、働く人の年齢·家族数で賃金を支払う賃金体系が確立されたわけである。そのような働く人の生活費を保障しなければならないという考え方が今も賃金の決め方に大きく影響を与える。

そして、企業内組合制度が個人賃金決定に影響を与える。日本では、企業内組合制度のもとで、団体交渉権が保証され、企業のイニシアチブで個人賃金決定の基準を変更する際、従業員によって受容される方式であるかどうかが賃金の決め方に強く影響した。例えば職務給が普及できなかったのは従業員に認められなかったからで(12)ある。そして、「伝統的賃金構造に対する衡平さの価値観」の存在で、賃金決定原理を職務給へ変更したとしても、年功賃金構造と妥協せざるをえなかった。

また、日本の大企業において、年功主義賃金制度は終身雇用制度にも大きく関わっている。終身雇用制度は「最初に就職した会社に、よほどのことがない限り、定年まで勤めることができることを(13)暗黙のうちに保障する」制度である。終身雇用制度のもとで、働く人は企業から雇用が保障される代りに、企業のために一生をかけて仕事に力を尽くす。企業にとっては、終身雇用制度は働く人の組織へのコミットメントの向上、忠誠度の向上、企業に必要な知的熟練の形成、雇用コストの減少などメリットを持っている。終身雇用制度を前提にして年功主義賃金制度は働く人への生活保障という機能をもっている一方、賃金の後払い的性格を特色としている。日本企業の生活給賃金としての機能は基本給だけでなく、家族手当、通勤手当、住宅手当をはじめとする生活関連手当ての中にも認められる。また、年功賃金システムにおいては、年収に占める賞与の割合が高いのも特徴の一つであり、賞与の算定基礎額の中心が年功的基本給であるため、賞与は生計費補充的な賃金としての部分もかなり多いと言える。後払いの賃金の役割を果たすのは退職金である。日本の大企業における退職金は欧米と比べてきわめて高い支給水準(14)にあるといわれている。というのは退職金の支給基礎額が基本給であり、定昇と勤続を重ねるごとに支給係数が累積的上昇するからである。したがって、働く人にとっては、年功主義賃金制度のもとで、入社してはじめ頃賃金が低くても、定年まで働いていれば、企業から相当な報酬が支給される一方、中途退職なら不利になってしまうのである。そうして、年功主義賃金制度は勤続年数の増加による昇進·昇給が働く人に長期的なインセンティブを与える一方、働く人の企業への定着を強化させ、終身雇用制度を維持させる。

個人賃金の決定に関わる賃金制度の設計にあたって、終身雇用制度の影響も見られる。終身雇用制度の日本においては、初任給の決定に外部労働市場の賃金水準を考慮する以外、労働市場の需給関(15)係などはあまり賃金に影響しないという特徴もある。言い換えれば、日本企業の個人賃金決定は主に社内的公正を基準に決定するのである。また、採用するときに、選ぶ雇用対象は仕事への適性より一般能力あるいは属人的要素(学歴や背景)などが重視される一方、企業内でも職務と人のつながりが強固ではないので、仕事の内容などを基準にして賃金を決めるのが難しい。しかも、集団を中心とする日本的価値観によって成立した終身雇用制度においては、企業内、職場の和を何よりも重視したので、賃金決定は人の属性を内部公平性の基準とされたのである。

終身雇用制度と年功賃金制度のもとでは、働く人は安定的雇用、永続勤続の優遇によって動機付けられ、長期的なモチベーションを維持するのが可能となるが、終身雇用の保障がなければ、年功主義賃金制度を維持させていくことができなくなるに違いない。長い視点でみれば、年功主義賃金制度は働く人のモチベーションを高めるといってもよいが、目の前の報酬制度として考えれば、同じ仕事を

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